円形脱毛症は、その発症率の高さに対して原因がいまいちハッキリとしていない珍しい病気の1つです。大人の男性だけでなく女性はもちろん小さな子供も発症することから、一種の社会的疾患とされています。
謎に包まれた円形脱毛症。ここではその原因や治療法について、現代医学で判明している限りの事をご説明いたします。
目次
円形脱毛症と通常の薄毛の違いとは
円形脱毛症は誰にでも、そして突然に起こりうる病気の1つです。脱毛の初期段階では自覚症状がないことが多く、ある日突然に頭に丸い部分の脱毛があることに気づくのです。
脱毛部分が円形型であることからこの名がつけられ、一般的には「10円ハゲ」なんて呼ばれ方をしています。円形の境目がはっきりした脱毛班が発生し、次第にその大きさはどんどん大きくなります。
実はこの症状は頭皮にだけ発症するのではありません。毛のあるところならどこにでも円形脱毛症が起きる可能性があります。
一般的に男性が発症する男性型脱毛症(AGA)とは違い、抜ける速度がとても速く、さらにまとめて一部分がごっそりと抜け落ちてしまうのが特徴といえます。
通常の薄毛(AGA)・・・ゆっくりとしたペースで、全体的に脱毛する
円形脱毛症・・・急激に、一部分が集中的に脱毛する
また、一般的な薄毛は男性、それも年齢が高くなれば高くなるほどに発症しやすくなりますが、円形脱毛症の場合は性別や年齢を問わず症状が見られるのも特徴的なところです。わずか10歳足らずの子供でも発症してしまうことから成長する過程で精神的なトラウマを抱えてしまい、人格形成に障害をきたすことすらあります。
円形脱毛症は単に頭髪だけに影響が留まらない怖い病気なのです。
円形脱毛症になる原因
円形脱毛症の原因は、残念ながらはっきりとは判明していないのが現状です。
今のところ有力な原因とされているのは以下の3つです。
1.精神面によるストレス
胃潰瘍などストレスを感じることで病気になってしまうことは沢山ありますが、円形脱毛症もその中の1つなのです。
ストレスを感じると身体は血管を収縮させるようになります。血管の収縮によりたまたま毛の生えている部分の粘膜が死んでしまうことで、穴が開いたような脱毛が起こります。ストレスが原因による円形脱毛症の場合、発症する3〜4ヶ月前に心配事や人間関係などで強いストレスを感じていた事が多いようです。
2.自己免疫疾患
人間の体には自己免疫という仕組みが備わっています。体の中に本来は存在してはいけない異物が入ってきた場合に、攻撃して無力化したり体の外に排除したりするようなメカニズムがあるために人間は自然界でもタフに生きていけるのです。
しかし、この自己免疫が何らかの原因で異常をきたしてしまうことがあります。これが自己免疫疾患です。自己免疫疾患に陥ってしまうと、本来は正常に作動している自らの身体のシステムを「異常だ!」とみなして攻撃してしまうことがあります。
これが円形脱毛症の原因にもなるとも言われています。本来は正常に動いているはずの毛根の髪を生やすシステムを誤解して攻撃してしまうんですね。
同じく自己免疫疾患には関節リウマチ、1型糖尿病、アレルギーなどがありますが、特にアトピー性皮膚炎発症者の約4割が円形脱毛症を同時に発症しており、両者の間には密接な関係があるとされます。
3.遺伝的素因
両親や兄弟に円形脱毛症の発症者がいる場合は本人も30%程度発症するので、遺伝的な原因があると考えられています。また、一卵性双生児では2人の発症率が高いのに対して、二卵性双生児では片方が発症する率が高くなるという報告もあります。
円形脱毛症の自己診断をしてみましょう
初期段階では自覚症状がほとんど無く痛みなども感じないために、ある日突然に円形脱毛症を発症していたことを知るとビックリしますよね。でも自分でその兆候を事前に診断できればその不安も少しは軽減されるはずです。
1.脱毛している部分の周囲を引っ張る
痛みがそこまでもない状態なのにもかかわらず、簡単に抜けてしまう場合は円形脱毛症の可能性が高いです。
2.抜けた髪の毛根をチェック
抜けた髪の毛根部分が細くなっていませんか?
また切れ毛などの症状も出てきます。
3.爪の状態をチェック
爪に小さなくぼみや、溝状の筋が横に入っている場合は円形脱毛症の可能性が考えられます。
子供や女性にも起こりうる円形脱毛症
頭髪の脱毛は男性がメインの病気と認識されがちですが、円形脱毛症に限って言えば子供や女性も発症する可能性が大いにあります。むしろ男女間や世代間での発症率の差はほとんど無いとされ、また子供の円形脱毛症の場合、なかなか治りづらいという特徴をもっています。
ですから、子供がいったん発症してしまうと親としては長期間付き合う病気としての心構えをしておく必要があります。大人は子供の精神的なストレスを理解して取り除くよう努力してみてください。また、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の症状を抱えている子供は、より円形脱毛症の発症率も高くなりがちです。特に幼児期はその合併が50~70%とも言われています。こまめに子供の頭髪の状況を確認するようにしてください。
女性に起こる円形脱毛症の場合は、出産した後に起こることが比較的多いです。出産直後はホルモンバランスが急激に崩れやすく、それが自己免疫疾患を生じさせるのではないかと考えられています。ほとんどが出産後に次第に回復していきます。また、他に育児ストレスや、社会に出て働く女性が増えたからこそのストレスが原因で起こる場合もあります。
現在主に用いられている円形脱毛症の治療法
円形脱毛症を治療するには、まずはどんな原因で円形脱毛症になっているかを把握することからしなければなりません。そのためには自己診断などせずに、皮膚科や薄毛外来などのクリニックでお医者さんの診断を仰ぎましょう。安易にストレスと決めつけて、心療内科に行って頭髪の方は放置しておいたりすると悪化する一方です。
それでは、円形脱毛症の具体的な治療法としてはどんなものがあるのでしょうか?
ドライアイス療法(冷凍療法)
円形脱毛症にドライアイスを1秒程度軽くあてることで刺激を与えます。有効率は70%程度です。跡が残ってしまう場合があるので、必ずお医者さんの指導下で行うようにしてください。また、1年程度実施しても効果が見られない時には中止しましょう。
PUVA療法
円形脱毛している部分に紫外線を照射することで、増えすぎたリンパ球の抑制に効果があります。
薬による治療
「フロジン液」というものを塗ることで、血管を拡張する作用があります。これは健康保険の適応ができます。塗薬・注射・内服の薬もありますが、副作用などもあるのでしっかり専門医の指導下で治療しなくてはなりません。
漢方薬による治療
円形脱毛症の専門的な薬というわけではなく東洋医学的な視点からの治療なので、日ごろの生活リズムを整えたり、ストレス軽減などの大きな意味での改善を目的としています。全身の気が整えば一部分の異常も治癒するだろう、というのが東洋医学の根源となる考え方です。
円形脱毛症は防ぎづらく治りづらい
円形脱毛症は、男性だけに限らず女性にも子供にも十分起こりうる、社会全体が抱える病気です。至るところにストレスが溢れるこの現代の社会で生き抜くためには切っても切れない病気であり、大げさに言うならば「現代病」なのかもしれません。
また、通常の薄毛と違って突然発症し、治りづらいという特徴を持っているために発症者に大きなショックを与えてしまいます。特に子供が円形脱毛症になってしまった場合は、周囲の大人は長期的にサポートしてあげるよう心がけてください。
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